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執筆者の写真早稲田ビートルマニア

サークル紹介企画9人目・ギターKさん

 こんにちは、平会員のKです。サークル紹介という事で筆をとらせてもらったんですが、具体的な紹介とかは他の会員の方々がやってくれると思うので本日はテーマを「Nowhere Manの和声について」としてコラムを書きます。浅めの韻律論的な話なので興味ない方は適当に飛ばして下さい。それでは本編どうぞ。

*各音声ファイルはリンクから開けます。適宜参照しながらご覧ください。(別タブで開きます。)

 

 アルバム"Rubber Soul"4曲目、"You Won't See Me"が終わった後、いっときの無音から始まるジョン・ポール・ジョージの和声。遅れて、裏拍から入るギター・ベース・ドラム。

 全ての人間を惹きつけるに足るイントロである。

 語れば尽きないが、今回はその和声について注目しよう。

*凡例 P:ポール・マッカートニー J:ジョン・レノン G:ジョージ・ハリソン

 

Verse

 コード進行はE→B→A→E→F#m→A→E→E。のっけのVerseから、和声に秘密がある。


E B

He's a real no where man

P E G# F# E D#

J B E D# C# B

G G# B B F# F#


 "nowhere man"の部分のジョージのコーラスに注目すると、ジョンの旋律から外れている事が分かる。和声としては、A→G#→F#となるのが妥当だろう。そうしてみたのがこちら。

ちょっとつまんない感じ。


 次はこちら。


A E

Sitting in his no where land

P B E E C# B

J A C# B A G#

G E G# F# E D#


 "nowhere land"の箇所、今度はポールのコーラスだ。こちらもジョンの旋律から外れている。和声としては、D#→C#→Bとなるのが妥当だろう。そうしてみたのがこちら。


 やっぱりちょっとつまんない感じ。この後も結構面白いコーラスラインなのだが、複雑なので解説してると文字数が足りなくなっちゃうので割愛。ごめんね。

 以上のように、通常の和音から外れたコーラスラインになっている。ただ捻ったコーラスラインにしてあると言えばそれまでなのだが、こういったようなジョンの主旋律から離れたコーラスラインを作ることで、主旋律の「孤独感」を際立たせているのではないだろうか。

 

Middle Eight

 コード進行はG#m→A×2→G#m→F#m→B。こちらも、コーラスラインが普通の和音とは異なっている。


G#m A(F#m) F#m B

あー らんらんらんらん×3 あー あー らららら ら

P D# E E D# D# E

G G# A A A A G#


 コーラスで五度の和音というのがそもそも奇妙な響きである。バンドで演奏されるときのよくある間違いがこちら。


G#m A(F#m) F#m B

あー らんらんらんらん×3 あー あー らららら ら

P D# E E D# D# E

G B C# C# B B C#


 コーラスラインだけで見ればコードに沿った三度の和音で綺麗に聞こえる。しかし、この八小節のコーラスラインの秘密は二回目以降、Verseに繋がる部分にある。最後のララララ"ラ"の箇所で、一見ポールとジョージの旋律がバラバラに聞こえるが、このようになっているのはれっきとした理由が存在する。ここで最初に出したVerseの和声を見てみよう。


E B

He's a real no where man

P E G# F# E D#

G G# B B F# F#


 分かりやすくするためにジョンの旋律は省略。ここまで読んでくれている諸賢ならば気づいてくれただろうか。そう、Verseの出だしとMiddle Eightの最後の音が全く同じなのだ。


F#m B E

あー らららら He's a

P D# D# E

G A A G#


 このように美しく繋がる訳である。この箇所が五度の和音で形成されているのは、その後のVerseで間に入るジョンの主旋律を待ち構えているからだ。ポールとジョージの旋律が異なっているのも、Verseの出だしの音に合わせるために計算されての事である。

 Verseのコーラスラインは主旋律の孤独感を際立たせるようなものだったが、ここでは真逆である。Verseにすんなりと戻っていく和声は、何か安堵を感じさせる。ような気もする。

 

 さて、まだまだ語りたい事は尽きないが、あまり長々と続けてしまうのもよろしくないのでこのあたりで筆を置いておこう。和声についてだけでも最後のVerseなど他にもまだまだ掘り下げる部分はあるし、楽器について話し始めたら本当にキリがない。興味があればぜひビートルマニアへ入会して聞きに来て欲しい。


 冒頭で言ったような韻律論的な解釈は控えめになってしまったが、やはり歌詞との相互の関係で強く印象付けられる和音・メロディというのは存在する。そういった解釈を自分で見つけてみるのも、音楽の楽しみ方の一つだ。そして、その楽しみ方を人と共有できればこれ以上の事はない。必修の講義で席が隣になった友達にここに書いたような話をしても、うまく理解されないだろうし何ならその友達はドン引きだろう。しかし、ビートルマニアの会員は大体の場合興味を示してくれる。そういった事が、入会して良かったと思えることの大きな要因の一つだ。


 ここに書いた事はあくまで解釈の一つに過ぎない。上に書いたように、自分の好きな曲に自分なりの解釈をつける事は音楽の大きな楽しみの一つだ。また、和声やメロディだけでなくコードやリズムに注目してみるのも良い。音楽的な側面だけでなく、当時の社会的背景やメンバーの様子を調べてみても面白い。ビートルズに限らず音楽の楽しみ方というのは様々であり、早稲田ビートルマニアはそんな貴方の楽しみを間違いなく後押ししてくれる。なんてったって現代の音楽のほとんどの源流と呼べるアーティストだからね。


 これを読んでちょっとでも興味が沸いたなら、ぜひ入会を考えてみてほしい。

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